メタンにラベリングは通用しない | Ember

メタンにラベリングは通用しない

日本が輸入する石炭の採掘時に放出されるメタンは、誰にも計上されていない。本来は誰かが計上すべきであり、まずは、日本がすでに輸入LNGで実施している開示イニシアティブと同様の取り組みから始めるべきである。

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1 Oct 2026
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政策決定者向け要約(PDF)

目次

関連資料
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主なハイライト

308.1 kt
2024年に日本の高炉製鉄所11カ所に搬入された石炭に紐づく炭鉱メタンの排出量。25.4 Mt(百万トン) CO2e(GWP20)に相当し、日本が報告する国内エネルギー部門のメタン排出インベントリ全体の約4.6倍に上る。しかし、現行のスコープ3排出量報告では、これが明示的に計上されていない。
+46%
日本製鉄の製鉄所に搬入された石炭33.13 Mt全体について炭鉱メタンを計上した場合の、同社がカテゴリー1および3で報告しているスコープ3排出量の増加率(GWP100、100年値)。メタンの短期的な温暖化効果を反映したGWP20(20年値)で評価すると、スコープ3排出量は2倍を超える。
13.62 Mt
2024年に日本がインドネシアから「コークス用炭」として記録した石炭のうち、具体的な品目に分類されず、残余区分「その他のコークス用炭(Coal for Coking N.E.S.)」に計上された量。コークス用炭全体の9割超を占める。

エグゼクティブサマリー

日本はすでに輸入LNGのメタンを管理しており、同じ仕組みを石炭にも適用できる

石炭を採掘すると、炭層からメタンが漏れ出します。このメタンの測定にはばらつきがあり、原料炭についてはほとんど規制されていません。この適用除外は、2つの主張に基づいていました。1つ目は、メタンは炭鉱会社の排出(スコープ1)として計上すべきであり、鉄鋼メーカーの排出(スコープ3)ではないという主張です。2つ目は、炭鉱単位の排出データが入手できないという主張です。しかし、そのいずれについても状況は変わりつつあります。

日本は、この変化に対応するうえで、他のどの輸入国よりも有利な立場にあります。日本の買い手は、CLEANイニシアティブを通じて、すでにLNG供給者に上流工程のメタン排出の開示を求めています。これは、輸入国が購買関係を通じて透明性を生み出せることを示しています。石炭も同じ商社を通じて取引されており、データを作成することも可能です。しかし、石炭側には、それを実際に要求する仕組みが存在しません。

現在、その役割を担う機関はありません。経済産業省(METI)は石炭をエネルギー安全保障の観点から扱い、環境省(MoE)の温室効果ガスインベントリは、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の規則に従い、日本で発生した排出のみを対象としています。また、鉄鋼部門の排出量算定では、上流のメタンは原則として除外されています。その結果、排出は石炭採掘と鉄鋼のはざまに抜け落ちています。

炭鉱メタン(CMM)は、20年間で見た鉄鋼部門の温暖化への影響を約27%上乗せしています。しかし、そのコストは石炭価格に反映されず、鉄鋼の脱炭素化計画からも外れたままです。

変化をもたらす鍵は、説明責任です。鉄鋼メーカーが炭鉱メタンをスコープ3排出量に計上すれば、投資家はそれを価格に織り込めるようになり、調達基準もそれを参照できるようになります。また、買い手は供給者に排出データを求めることができます。

石炭についての枠組みは、日本がすでにLNGで運用している3つの要素、すなわち買い手による開示要請、供給者による標準化されたメタン排出データ、そして独立した集計を組み合わせることで構築できます。CLEANイニシアティブはそのひな型となります。これをモデルとした初の石炭メタン開示サイクルを実施すれば、国際ルールがまだ形成途上にあるうちに、日本は独自の基準を確立できます。

CLEANイニシアティブがもたらすのは排出削減技術ではなくガバナンス(管理の仕組み)であり、開示だけで排出量が減るわけではありません。次のステップは、検証されたメタン強度の指標と、それを反映した価格付けです。

EUは2027年8月までに原料炭メタンの規則を定める予定で、2030年以降、輸入燃料はEU市場に参入するためにメタン強度の上限を満たさなければならなくなります。これらはいずれも日本の鉄鋼メーカーを拘束するものではありませんが、その影響は2つの形で各社に及びます。1つは、メタン排出の多い石炭が新たな買い手を探し始めることです。もう1つは、自らが策定に関与していないルールを受け入れを得なくなることです。中国も、国内で炭鉱メタンの抑制に乗り出しています。

2028年度から始まる日本のGX賦課金(化石燃料賦課金)は、輸入石炭の炭素(CO2排出)に価格を付けますが、その採掘に伴うメタンは対象外です。一方、現在進められている高炉改修の判断は、原料炭の需要は2040年代まで固定化されることになります。日本に残された時間は11カ月です。その間に形成途上のルールづくりに関与するのか、それとも他国・他地域で作られたルールを受け入れるのかが問われています。

鉄鋼バリューチェーンにおけるメタン管理の改善は、この10年間に取り組める最も効果的な気候対策の一つであり、レジリエントな産業移行に不可欠です。Fidelity Internationalを含め、運用資産総額9兆8,500億米ドルを代表する投資家は、原料炭由来のメタンを鉄鋼バリューチェーンにおける財務上重要な検討事項として認識しています。日本には、サプライチェーンにおいて炭鉱単位の測定・検証・開示の強化を主導し、実効性のあるメタン削減を支援する機会があります。

Sue Lyn Stubbs(スー・リン・スタッブス)
‍
Fidelity International(フィデリティ・インターナショナル)

「冶金用」というラベリングは何が報告されるかを決めますが、炭鉱から実際に何が排出されるかを決めるわけではありません。日本はCLEANイニシアティブを通じて、必要となる買い手主導の仕組みをすでに構築しており、それをこの地域の石炭・ガスのサプライチェーン全体に広げることができます。日本が主導すれば、東アジアはルールづくりに参画できます。日本が待てば、ルールは他の地域で作られることになるでしょう。

Yu-Ting Chang(張瑜庭 、ユーティン・チャン)
‍
Ember(エンバー)炭鉱メタン・鉄鋼担当アナリスト

重要な知見

01

CLEANイニシアティブの2回の報告サイクルで、LNGプロジェクトのメタン開示率は35%から64%に上昇

日本の買い手は、既存の売買契約の条項を通じて、LNG供給者に上流工程のメタン排出データを求めている。JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)が参加企業のとりまとめと結果の集計を担い、初となるプロジェクト単位のメタン排出ベースラインを構築した。規制も新たな機関も必要なかった。日本の石炭サプライチェーンを担っているのも同じ買い手と商社だが、石炭については同様の要請はまだ一切行われていない。

02

2024年に日本の鉄鋼大手3社に搬入された石炭に紐づく炭鉱メタンは推定308.1 kt CH4、日本が報告する国内エネルギー部門のメタン排出インベントリ全体(67 kt CH4)の4.6倍

これは20年値(GWP20)ベースで25.4 Mt CO2eに相当し、日本が報告する廃棄物部門のメタン排出量(124 kt CH4)の2倍以上である。このうち181.7 kt CH4は日本製鉄によるもので、同社の高炉製鉄所7カ所で受け入れた33.13 Mtの石炭に由来する。これに対し、同社が原料炭として開示している量は24.87 Mtにとどまる。企業報告で用いられる100年値(GWP100)ベースでは5.4 Mt CO2eとなり、同社がカテゴリー1および3で報告しているスコープ3排出量の46%に相当する。20年値ベースでは15.0 Mt CO2eとなり、同排出量を2倍以上に押し上げる規模である。このうち一部でも企業の開示に含まれているかどうかは不明であり、いずれも日本のグローバル・メタン・プレッジの算定枠組みには含まれていない。

03

インドネシアから日本への石炭、日本の税関は52%を「コークス用」、インドネシアの税関は39%を「コークス炭」と記録、民間の貿易追跡データでは「冶金用」はわずか2%

適用除外は申告上の最終用途で決まるが、メタンの排出は炭層で決まる。両国の税関の記録は、輸入総量ではおおむね一致しているものの、そのうちどれだけが「コークス用」かについては食い違っている。これほど不安定なラベリングは、メタン強度について何も示さない。それにもかかわらず、石炭フェーズアウト政策、金融タクソノミー、開示枠組みは、いまだにこのラベリングに依拠している。

関連資料

謝辞

協力者

Ember: Tito Das, Dody Setiawan, Bex Honer, Adomas Liepa, Ardhi Arsala Rahmani, Taiki Asato, Sabina Assan, Nishant Bhardwaj, Sougol Aghdasi, Chelsea Bruce-Lockhart.

レビュアー

外部レビュアーの皆様に感謝申し上げます: Sue Lyn Stubbs(Fidelity International)、Kenta Kubokawa、Sala Tsuzuki(以上、Transition Asia)、Jasmine Fowler-Morrow(ACCR)、Lia Wagner(Urgewald) 、Roger Smith、Anand Pathanjali (以上、SteelWatch) 、Hongyou Lu、Bo Shen(以上、UC Berkeley)。

表紙画像

採石場の地面に、黄色い大型の鉱山用トラックが停まっている。背景には、層状の岩盤が、雲の多い空に向かってせり上がっている。

写真:Gansham Ramchandani / Pexels

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